欧州連合(EU)は3月22日外相理事会をひらきピープルズ・リパブリック・オブ・チャイナ(中華人民共和国、People's Republic of China。以下、PRCと略す。)によるウイグル人の人権侵害をめぐる制裁発動を決めました。EUによる対PRC制裁は六四天安門事件(1989年6月4日)を受けて武器輸出禁止を決めて以降はじめてのことです。
チャイニーズ・コミュニスト・パーティー(中国共産党、Chinese Communist Party)政権(以下CCP政権と略す。)は、「新疆ウイグル自治区」における「ウイグル族」に対する内政に外国が干渉するな、と言うだろう。しかし、史実は1949年にPRCが「東トルキスタン共和国」に侵攻して武力で統合し、それ以来同地の「ウイグル人」の人権を侵害し続けているのです。
まず第一に、日本も自由主義陣営の民主主義国家の一員として、すぐにPRCに対する制裁発動を決めるべきです。PRCが経済大国であり、同国と経済的なつながりがあるのは米国やEUも同じです。経済を理由に対PRC制裁を決めないということは、「日本は人権を軽視しています。」と国際社会に表明することと同じです。そうでなくても、「人の命」や「人の権利」より「おカネ」を優先させるという考え方は日本の文化にありません。武士は食わねど高楊枝という言葉がある通り、対PRC制裁発動により経済的に困窮するとしても国際的な体面・面子のために「やせがまん」するのが日本人の気風なのではないでしょうか?
第二に、日本は米国やEUによる制裁から脱するためにCCP政権に利用されることがあってはなりません。日本は、既に一度そういった歴史的大失敗外交をしています。六四天安門事件(1989年6月4日)後の天皇陛下訪中が当時のPRCの国際社会復帰を大きく助けたのは、たった30年前のことです。タラレバになりますが、この日本の歴史的大失敗外交がなければ、ウイグル人のみなさんや香港人のみなさんの人権が現在ほど踏みにじられることはなかったかもしれないのです。
CCP政権は、今回も必ず日本を「利用」しようとします。絶対です。日本は1ミリもPRCを助ける様な外交をしてはいけません。一刻も早く対PRC制裁を発動し、制裁解除は米国やEUと同時で良いのです。PRCに泣きつかれると、必ず「日本はPRCと欧米の架け橋になるべきだ」的な論調が日本国内に生まれますが、これほど愚かなことはありません。わかりやすい理由を3つ挙げてみましょう。
理由1:CCP政権は日本を利用しようとするだけで、日本に感謝したり、PRCの民主化を進めたりはしません。絶対しません。なぜなら、六四天安門事件の際の天皇陛下訪中の後に、CCP政権は「うまく日本を利用できた」と明言していますし、PRCの民主化は当時から1ミリも進んでいませんし、対日本の外交だけを見ても尖閣諸島周辺海域に対する領海侵犯を繰り返している(むしろ悪化している)からです。CCP政権が日本や日本人に感謝したり、態度を改めるなどということはあり得ないということを第二次世界大戦後の「史実」が証明しています。
理由2:そもそも、日本は第二次世界大戦後の東アジアにおいて、モンゴル、チベット、ウイグル、台湾、ベトナム、香港などと同じPRC覇権外交の「被害者」です。モンゴル、チベットおよびウイグルはその領土を奪われ人権を侵害されています。台湾は常に侵攻の危機に晒されていますし、武力侵攻も辞さないとシージンピン(習近平、Xi Jinping)も言いました。ベトナムも南シナ海の領土を武力で奪われましたし、香港は一国二制度を一定期間維持するという国際的な約束を昨年(2020年)6月に一方的に反故にされて民主派の人々が現在進行形で逮捕・拘束されているのはだれでも知っています。日本も尖閣諸島周辺海域の領海侵犯を受け続けているだけでなく、史実に基づかない歴史を捏造されて国際社会に流布され続け、かつ、PRC国内では反日教育が行われています。日本が、同じ被害者として、ウイグルや台湾や香港と歩調を合わせた発言をしたとしても、国際社会において反論したり文句を言ったりするのは、PRCの他は北朝鮮と韓国しかないでしょう。
理由3:究極の2択ですが、米国とPRCが対立する今後の国際社会において、米国かPRCのどちらか一方の陣営を選ばなければならないとしたら、米国しかないでしょう。もし、そんな二者択一状況は生じ得ないという日本人がいるとしたら現在の国際社会をまったく知らない方だと言わざるを得ません。また、もしPRCを選ぶべきだという日本人がいるとしたら、武漢ウィルス(新型コロナウィルス)はPRCの武漢で発症したのではないと公言して憚らないCCP政権を信頼すべき理由、信頼しても良いと考える理由を尋ねてみるべきでしょう。1つでも2つでも具体的な史実に基づく説明が可能なら聞かせて頂きたいところです。

日本はウイグル人の人権を守るため、一刻も早く対PRC制裁を発動し、米国やEUが制裁解除するまでは制裁を維持すべきです。その間の経済的不利益は同じ被害者として、かつ、東アジアを代表する民主主義国家として台湾などと一緒に「やせがまん」するべきです。
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